「混んできたね」

「うん」

駅から海を目指して歩いていると、浴衣姿の女の子達やカップルが増えてきた。

気をつけていないと、誰かとぶつかりそうになる。

「樋口、こっち側を歩きな」

工藤くんは私の肩に手を添えて立ち位置を変え、自分は車道側を歩く。

「ありがとう」

色々と気遣ってくれる工藤くんは、私を大切にしてくれている気がして、照れくさいけど嬉しくなった。

海のそばまで来ると、防波堤沿いに等間隔でカップルが並んでいる。

私達も空いているスペースに立ち、時間になるのを待った。

「ここから見えるかな?」

「ああ、花火だからね。空が見えれば花火も見える」

「そうだね、ふふっ」

思わず笑って工藤くんを見上げると、ばっちり目が合う。

と次の瞬間、繋いだ手がキュッと握られるのを感じた。

いつもと違う雰囲気にどうしたものかと戸惑っていると、急にヒュルルと音がしてパッと空が明るくなった。