「おはようございます」
「おはよう。行こうか」
「はい」
翌日、待ち合わせの駅に現れた工藤くんは、以前と変わらない黒のボトムに白いTシャツ姿だった。
なんとなく気まずい雰囲気のまま、私達は駅の改札を通って電車に乗る。
それ程混んではいないが席は空いておらず、私達は車両の奥まで進んで黙ったまま電車に揺られていた。
しばらくして大きな駅に着くと、一気に大勢の人が乗り込んできた。
どうやら同じオープンキャンパスに行く学生らしい。
ギュウギュウのすし詰め状態になり、私は奥の車両連結ドアに追いやられた。
それでもまだ人がぐいぐいと押し寄せて来て、私はドアと板挟みになり、身体がよじれて思わず顔をしかめる。
と、工藤くんが私の顔の両側に手をつき、かばうようにして囲ってくれた。
少し空間ができて、私はホッと息をつく。
「ありがとう」
小さくお礼を言うと、工藤くんは頷いた。
そして私よりも更に小さな声で呟く。
「樋口、この間はごめん」
耳元でささやかれる声に、私は思わずドキッとする。
「ううん、私の方こそごめんなさい」
そのあとも、やっぱり無言のまま電車に揺られる。
けれどさっきまでの気まずい沈黙ではなく、気恥ずかしい沈黙に変わっていた。
「おはよう。行こうか」
「はい」
翌日、待ち合わせの駅に現れた工藤くんは、以前と変わらない黒のボトムに白いTシャツ姿だった。
なんとなく気まずい雰囲気のまま、私達は駅の改札を通って電車に乗る。
それ程混んではいないが席は空いておらず、私達は車両の奥まで進んで黙ったまま電車に揺られていた。
しばらくして大きな駅に着くと、一気に大勢の人が乗り込んできた。
どうやら同じオープンキャンパスに行く学生らしい。
ギュウギュウのすし詰め状態になり、私は奥の車両連結ドアに追いやられた。
それでもまだ人がぐいぐいと押し寄せて来て、私はドアと板挟みになり、身体がよじれて思わず顔をしかめる。
と、工藤くんが私の顔の両側に手をつき、かばうようにして囲ってくれた。
少し空間ができて、私はホッと息をつく。
「ありがとう」
小さくお礼を言うと、工藤くんは頷いた。
そして私よりも更に小さな声で呟く。
「樋口、この間はごめん」
耳元でささやかれる声に、私は思わずドキッとする。
「ううん、私の方こそごめんなさい」
そのあとも、やっぱり無言のまま電車に揺られる。
けれどさっきまでの気まずい沈黙ではなく、気恥ずかしい沈黙に変わっていた。