2回目の今回も、待ち合わせは中央図書館で10時に。

そしてまずは、今後の予定を確認する。

「オープンキャンパスの日程、調べてみた?」

「うん。ある程度カレンダーに書き込んでみたんだ」

「どれ?見せて」

工藤くんは真剣に、自分の手帳と私の手帳を見比べる。

私は伏し目がちの工藤くんの横顔をそっと見つめた。

(やっぱり眼鏡ない方がいい。目元が涼しげで、なかなかかっこいいよね)

誰にともなく心の中で呟いていると、やがて工藤くんが顔を上げた。

「二人ともかぶってる大学がいくつかあるな。そこは一緒に回ろう」

「はい」

「まずは今月末と、来月の初めと…」

工藤くんが自分の手帳に丸をつけるのを、私も身を乗り出して確認し、自分の手帳にチェックを入れる。

そのうちにあることに気づいた。

同じ大学でも、工藤くんの手帳に書かれたキャンパスは、私の志望する学部のキャンパスとは違う。

確か、この大学のこのキャンパスは…

「工藤くん、もしかして医学部志望なの?」

すると工藤くんは、ちょっと困った顔になる。

「あー、うん。まあ…、まだ決めてないけど」

「そうなんだ。あ!そう言えば、工藤くんのおうちって病院だっけ?」

同じ中学だった子がそう話しているのを聞いたことがあった。

「病院じゃなくて、医院。単なる開業医だよ」

「でもお父さん、お医者様なんでしょ?工藤くんが跡継ぎなんだね」

「別に医者になれとは言われてないんだ。だから俺も迷ってて…。こんな中途半端な状態で、医学部なんて受かりっこないと思うしね」

「そんなことは…。迷ってるっていうのは、他にやりたい仕事があるからってこと?」

「いや、俺なんかが医者を目指していいのかどうかって」

ふうん…と、私は視線を外して考え込む。

「工藤くんって、医学部に合格するだけの能力があるでしょ?それってつまり、医者になるべき人だってことだと私は思う」

え?と工藤くんは顔を上げて私を見た。

「ほら、もし私が誰かを助けたいと思っても、できることなんて限られてる。せいぜい、転びそうなおばあさんを支えるくらい。だけど工藤くんなら、もしそこでおばあさんが倒れて怪我をしても、手当をしてあげられる。病気になったら治療してあげられる。それだけのポテンシャルがあって、これから医学の道を進んでもきちんと全うできる人だもん、工藤くんは」

私がきっぱりそう言うと、工藤くんは驚いたように目を見開いている。

「医師になりたくてもなれない人がたくさんいる。だけど工藤くんなら、間違いなくなれるよ」

「あり…が、とう」

たどたどしくお礼を言う工藤くんは、しばらくうつむいたままだった。