カフェを出ると、私は行きつけのコンタクトレンズのお店に工藤くんを案内した。

「こんにちは。処方箋の期限が切れたので、更新をお願いします」

受付で会員証を渡すと、カウンター席に工藤くんと並んで座る。

「更新ですね。現在、定額プランをご利用中ですが、プランの変更はありませんか?」

「はい」

「かしこまりました。では書類を準備しますので、少々お待ちください」

スタッフの女性が席を外すと、工藤くんはまじまじとテーブルにあったパンフレットを読み始めた。

「この定額プランって何?」

「ん?ああ。レンズ1枚に対しての料金ではなくて、ひと月ごとに料金を払うの。そうすれば、例えばコンタクトを落としちゃったりしても、追加で注文出来るから」

「へえー、それでひと月3千円もしないんだ」

「うん。レンズに傷が入っちゃっても、気兼ねなくポイッと捨てて新しいのをつけられるから、私は気に入ってるの」

工藤くんは、感心したようにしきりに頷いている。

「工藤くんも、コンタクトに興味あるの?」

「ああ。眼鏡だと、レンズとの距離が開く分、焦点が定まりにくくて目が疲れる気がするんだ。コンタクトならストレスフリーだろうな、でも俺、大ざっぱだから、絶対レンズ破いたり落としたりするだろうなって思ってて」

「分かる。私も最初そう思ってたんだけど、それなら定額プランがありますよって言われて、そうなんだ!って決めたの」

「ああ。まさに俺も今、そうなんだ!って思ってる」

あはは!と私は思わず声を上げて笑う。

「それなら工藤くんも、思い切って今日試してみたら?」

「え、できるのか?」

「うん。これから眼科で診てもらって、問題なければお試しで入れてくれるよ。あ、保険証持ってる?」

「ああ、財布に入れてある」

それなら、と、私は戻って来たスタッフの人に話をして、二人で併設された眼科に向かった。