「違う違う。そっちのメリットじゃなくて。あと、雪くんが私の実家や財産狙いじゃないことくらい、分かるよ。だからその……」

 ちょっと意地悪なことを言っただけなのに、雪くんが過剰に反応したものだから、私は慌てて訂正した。

 だって、雪くんが私と結婚することにメリットがあるって、何度も言うものだから。逆に私の方はないように言われているように感じたのだ。
 あと、メリットの中に、私への愛情がないことも気に障った。

 私のために今の地位を得たって言っていたのに……。

 それでも雪くんは、私の言葉を嬉しそうな顔で聞いてくれた。

「つまり、拗ねったってこと?」
「うっ」
「大丈夫。どんな肩書があろうがなかろうが、僕は早智が欲しいんだ。これ以上のメリットはないよ」

 サラッとほしい言葉をいう雪くんの顔を見ていられなくて、私は顔を背けた。が、次の瞬間の発言を聞いて、すぐに戻す。

「だから早智に危害を加えた連中は、ちゃんと制裁しておいたから」
「え? 制裁?」
「うん」
「警察がするんじゃなくて?」
「それはそれ、これはこれだよ」

 どうやら私の聞き間違いではなかったらしい。別の意味で頭が痛くなった。