「いや、ここにいるよ」

 突然、雪くんの声が聞こえた。
 すぐに起き上がって顔を確認したかった。けれど雪くんに非難がいき兼ねない状況に、私はグッと堪えるしかない。ただでさえ、両親は私を連れ戻したがっているのだから、尚更だ。

 たまに帰るくらいならいいんだけど、完全には……。

「すみません。遅くなりました」
「本当なら怒りたいところだが、早智をこんな目に遭わせた人間を捕まえてくれたんだ。そこについては言及しない」
「ありがとうございます」
「しかし、早智を危険に晒したことには変わらない。これ以上は――……」
「待って、お父さん!」

 このままだと全ての責任を雪くんに被せる気だと察した私は、無理をしてでも止めに入った。

「早智。大きな声は……」
「分かってる。だけど、何も聞かずに、判断するのは、やめて」

 頭が痛くて、途切れ途切れに言葉を繋ぐ。息切れしそうだった。

「そうだな。事故の経緯も聞かなくては」
「っ! ありがとうございます。けれどそれは僕からではなく、会長……養父から聞いていただけますか? 挨拶をしたいと来ているんです」
「え? どうして……」
「今回のことは、義姉が関わっているからなんです」

 雪くんの発言と警察、会長の出現で、何があったのか、私は瞬時に察した。
 小楯さんたちの発言で、すでに千春さまが関与していることを知っていたからだ。そして雪くんと会長も、また同じように知ってしまったんだ。