「早智、大丈夫? やっぱり無理をしていたんじゃないの?」
「えっと……」
「退院したら、戻ってきなさい。さっき白河さんから連絡があって、警察が事故と事件の両方で調査してくれるらしいわ」
「え、え?」

 白河さんって雪くんのことかな。しかも、知らない内に警察!?

 咄嗟に起き上がろうとした瞬間、頭に激痛が走った。

「うっ!」
「ダメよ、起き上がっては」
「そうだ。頭を打ったのもあるが、疲労も蓄積していたと聞いた。しばらくの間、入院できるようにしておいたから、ゆっくり休みなさい」

 ということは、ここは高野辺家の息のかかった病院ってことなのだろう。確か、父方の親戚に医者がいたような気がしたから……。

 都心に近いから、むしろそっちの方がいいだろうと運ばれたのかもしれない。
 あの時、笠木さんの手を振り払った拍子に体が後ろに傾いて……手すりを掴もうとしたけれど、届かなくてそのまま私は階段から……落ちたのだ。

 意識が朦朧としていた中、雪くんもいたような気がしたけど……あれは気のせいだったのかな。

 お父さんの言う通り、疲れもあったのかもしれない。同じ会社にいるけれど、常に雪くんは傍にいてくれるわけでもないのに、あんな幻覚を……。

 慣れない仕事と環境で、常に気を張っていたとしても、あり得ない……!

 それでも尋ねずにはいられなかった。

「雪くんは今、警察の方にいるの?」

 ここに雪くんがいない、もしくはいられない理由を。