目を開けると、見慣れない白い天井で、一瞬、ドキッとした。雪くんの部屋を思い出したからだ。
 あの時も今みたいに記憶が飛んでいたから仕方がない。

 それよりもここは何処なんだっけ? 何か色々な人に声をかけられたのは覚えている。
 確か「名前を言えますか?」「生年月日は?」とか。多分、白い恰好の人に……。

 しかも消毒液の匂いがした。ううん。ここも何だか同じような感じがする。

「早智!?」
「お、母さん?」

 どうしてここに、と言おうとしたら、今度はお父さんの姿も見えた。

「こらこら、早智は頭をぶつけたんだぞ。大きな声は控えなさい」
「そうでした。思わず……」

 あれだけ反抗した態度を取っていたのに、両親は家にいた時と変わらずに接してくれる。

 それだけで泣きそうになった。

 小楯さんたちに嫌がらせを受けても、これは私が選んだことだから、と自分に言い聞かせてきた。だから雪くんが傍にいても、弱音は吐かない。そう思っていたのに……。

 両親の顔を見て揺らぐなんて……なんて私は脆いんだろう。こんなに、弱かったのかな、私。