「ま、待ってください! 私はただ、頼まれただけなんです!」
「あ、杏奈!」
「だってこのままじゃ」

そう、このまま黒幕の存在を明かさなければ、笠木は逮捕まではいかないが、何かしらの罪と会社……主に僕からの制裁は受けることになるだろう。

さらに言うと、黒幕が笠木たちを庇うような人間ならば、このような裏切りはしない、ともいえる。だから逆に、見捨てられる可能性も高いことを示唆していた。

僕はここぞとばかりに、トドメを刺す。

「誰の指示だったのか言えば、笠木だけではなく、あとの二人の処遇も考えておこう」
「副社長……」
「ここで言わなくても、警察の方で事情聴取を受けることになるから結果は変わらない。が、社内での処遇はどうかな。僕の口添えよりも、バックにいる誰かさんがどうにかしてくれる、というのなら、話は別だが」

してくれない、と予想したから笠木はあのように言ったのだ。さぁ、どう出る?

「じ、実は社長に……言われてやりました!」

僕はすかさずスマホを操作した。何故って? それはこれから言う笠木の言葉を録音するためさ。

大人しくしていれば、もう少し社長業を長くできたものを。墓穴を掘ってくれてありがとうございます、義姉さん。いや白河千春。