救急車が到着して間もなく、早智は病院に運ばれた。心配で付き添いたかったのだが、誰が呼んだのか、警察もやって来たのだ。

「被害者である高野辺早智さんと、言い争いになった原因は何ですか?」

 僕がありのまま状況説明をすると、警官が笠木に詰め寄った。その近くには小楯と横倉もいる。
 しかし、三人が結託しないようにと、宇佐美がその間にいるのだが、その姿がまるで看守のようだった。

「それは……高野辺さんが、仕事を……そう! 仕事をサボろうとしたから止めたんです」
「だから追いかけていたんですが? それも三人で」
「追いかけていた? 被害者を、ですか?」

 笠木はいい案を思いついたように言ったが、逆に宇佐美によって窮地に追いやられていた。
 ただの運転手でSPだと思っていたから、驚かされた。早智を助けられなかったことを、僕と同じように、気にしているのだろうか。

「それはさすがに妙ですね。まさかとは思いますが、いじめでもされていたんですか? だから言うことの利かない被害者を突き落とした」
「違います! アレは高野辺さんが私の手を振り払ったから」
「被害者が抵抗しているのなら、尚更ですね。とりあえず、現場はこのままにしてもらえますか? 事故というよりも事件性の方が高くなりましたので」
「分かりました。ここは閉鎖します。元々、非常階段であまり、人が寄り付かない場所なので、大丈夫でしょう」

 その言葉に警官は頷き、笠木は青ざめた。