それは総務課に配属されて知ったことだった。千春さまが雪くんを、あまりよく思っていないことを。
 自分が社長に就けたのは、あくまでも雪くんが成長するまでの繋ぎ。そう、期間限定の社長職だったからだ。

 ずっとリバーブラッシュの社長令嬢として、白河家の一人娘として君臨してきた千春さまだ。一般的なお嬢様たちと同じく、我が儘なところがあるらしい。

 そう思うと、我が高野辺家は随分と特殊なのだと思い知らされた。可愛がられているお嬢様、と世間は思うだろうが、実際は我が儘を言っても、それが通らないことが普通。
 一般家庭よりも厳しい有り様だった。

 けれど世間は、千春さまのようなお嬢様が普通だと思っている。
 我が儘で、世界は自分を中心に回っている、と勘違いしている世間知らずのお嬢様。

 小楯さんたちを使うことに、何の躊躇いもないのだから、このように考えていてもおかしくはなかった。