「えっと、何から話そうか」

 一旦、私から体を離し、居住まいをただした雪くんが、顎に手を当てて唸った。すぐに助け舟を出したいところだったけれど、私もまだ混乱の最中だった。

 それでも、何か言いたくなるのは、昔の癖だろうか。困った雪くんを見ていると、何か言いたくなった。

「昔……そうだ、昔のこと」
「え?」
「中学校に上がる前に転校していったでしょう? 親戚の家に。それが白河家だったの?」
「いや、白河家に養子へ入ったのは、中学を卒業した後なんだ」

 雪くんはゆっくりと、その後の経緯を話してくれた。

 中学に入り、新しい家族に引き取られても、雪くんの立場は弱いままだった。

 当たり前だ。
 何年経っても私が旧家のお嬢さんであるのと一緒で、雪くんもまた、孤児というレッテルを貼られている。

 いくら私たちが普通に過ごしていても、周りはそういう色眼鏡で見てしまうのだ。

 真逆にいるけれど、私と雪くんは一緒だった。