「それは……できない」
「何で?」
「昼間、小楯(こだて)たちが高野辺のところに行ったって……聞いたから」
「……小楯、さん? って誰?」

 多分、あのお姉さま方だとは思うけれど、雪くんとの関係性が知りたくて聞いた。意図を察してくれたのかは分からないが、望み通りの答えが得られた。

 小楯(こだて)美玲(みれい)笠木(かさき)杏奈(あんな)横倉(よこくら)真奈美(まなみ)。三人とも総務課で、主に副社長室の秘書を担当している、ということだ。

 道理で私に突っかかるわけだ。恐らく雪くんにアプローチをして……して?

「つまり雪くんは、小楯、さんたちが私に何かするであろう、アクションを受けていたの?」
「それは、その……誤解を受けたくないから、ゆっくり話せるところに行かないか。ここだとまた見られたら困るから」
「雪くんが私の腕を離してくれれば困らないわ」
「ダメだ! そしたら高野辺は逃げるだろう?」
「当たり前じゃない」

 いくら相手が雪くんでも、面倒事は勘弁してほしい。それはもう、地元で散々やったことなのだ。いや、これからが大変だった。

 上の姉さんたちを見てきたから知っている。お見合い話が舞い込んで……家の中の雰囲気は滅茶苦茶。
 親の要望と本人の要望、仲人さんたちの思惑が交差して、気持ち悪くなるのだ。

 そう、気持ち、悪く……。