「君はなにか勘違いをしていないか?」
「はい?」

「俺がいつ『真衣に相手してもらっていない』と言った?」

「そ、それは……」


相道さんは目を泳がせながら、口籠る。

この際、言いたいことを言わせてもらう。どの道、真衣の妊娠をきっかけに腹を括るつもりだったから。


「俺に付き纏うのは勘弁してくれ。これ以上しつこいようなら、君を別の診療科に異動させる。」
「なっ……」

「俺は真衣しか愛せない」


ここまで言うつもりはなかったが、もう真衣への想いが止まらない。

どんなときも家族のことを1番に考えてくれる真衣。仕事にも熱心で、俺の仕事のことも理解してくれている。

そんな最高の妻を、あっさり手放すわけがない。


「な、なんなんですかぁ? 大澤先生、そんなつまんない男だと思ってなかったです」
「なんとでも言ってくれて結構」


俺がそう言うと、相道さんは外来から出て行ってしまった。

……これで、終わったかな。
でも、俺が言った気持ちに嘘はない。

俺は、真衣しか愛せない。


その後すぐにスマホにメッセージが届き、最愛の妻からのメッセージに思わず頬が緩んだ。


『医局にきんぴらごぼうサンド置いてあるから、手が空いたときに食べてね』