嫌な過去を掘り返され困っている私を見て、ケラケラ笑っている翔くん。

これだから賢い人は。
余計なことまで覚えていて困る。


「拗ねるなよ、真衣。ほら、ホテルに着いた」


翔くんにそう言われ窓の外を見ると、真っ白で綺麗な外観の大きなホテルが目に入った。

いくつかホテルが並んでいるけれど、外観からして高級そうなそのホテル。


「まさか、ここに泊まるの?」

「当たり前だろ」
「えっ……絶対高いじゃない」


「新婚旅行だからな。奮発した」と言った翔くんは、ポケットから財布を取り出し、支払いの準備を始めた。

戸惑ったままの私を乗せたまま、タクシーはホテルの入り口に停車する。いつの間にか眠ってしまった瑠愛を抱っこしてタクシーを降りた私は、目の前にそびえ立つ立派なホテルをじっくりと見上げた。

これ、ホテル……というより、お城じゃない?


「瑠愛、寝たの?」
「うん。長いフライトで疲れたんだと思う」

「残念。せっかく絵本に出てくる城みたいなホテルを見せてやろうと思ってたのに」


そんなことを言いながら大きなキャリーバッグを転がし、ホテルの中へ進んで行く翔くん。彼に続いてホテルの中へと入ると、内装も綺麗すぎて声が出なくなってしまった。

……本当にお城みたい。
中にはプール施設もあるみたいだし、瑠愛も遊ぶことが出来る。