――場所は、”ZIGGY”の扉の横。
私はいま偶然にも店の奥に座っている加茂井くんと赤城さんの復縁話を聞いてしまった。
どうして私がここにいるのかというと、加茂井くんと一緒に撮った写真をまた見たいと思っていたから。
この店は赤城さんとの思い出の場所だけれど、赤城さんとのツーショット写真を張り替えたあの日から私の特別な場所にもなっていた。
でも、ガラス扉から店内を覗くと見覚えのある制服を着た男女がいたので確認してみたら、それは加茂井くんと赤城さんだということが判明して扉の横にサッと身を隠した。
赤城さんがまさかこんなに早くに復縁話を持ち込むなんて思いもしなかった。しかも、告白現場を目撃してしまうなんて。
二人が向き合っているだけでも嫉妬するのに、これ以上聞く気になれなくてすぐに店を離れた。
一歩足を進めるたびに揺れる涙。心臓はドクンドクンと低い音を立てている。
現実逃避をするようにヘッドホンを装着した。赤城さんの復縁話は過去最大級の雑音だったから。
空はポツポツと涙を流し始めた。
次第に私の涙と重なった。
どうしよう……。恐れていたことがとうとう現実になってしまった。
加茂井くんは何て答えるのかな。もしイエスの返事をしてしまったら、加茂井くんがもっと遠い人になってしまう。
最初のうちは彼が幸せになれればいいと思っていた。それはいまよりもっと間接的な関係だったから。
それから私が赤城さんの浮気現場を目撃して、二人が別れて、彼が赤城さんにヤキモチを妬かせたいと言ってきたから、偽恋人として協力していればいつか赤城さんと復縁するんじゃないかとも考えていた。
――でも、いまは考え方が違う。
赤城さんと復縁をして欲しくないし、偽恋人を演じているうちに欲張りになってしまった。
毎日好きだと伝えたいし、私だけを見ていて欲しい。
赤城さんと一緒になることが彼の幸せだとわかっていても、私は自分の気持ちを優先したい。