彰は、麻里亜からのメッセージを見て、携帯使用許可まで移動し、さっそく返信をした。
【いいよ。いつもの待合室で待ってるよ。看護師さんたちに話を通しておくからね。】
と送信をした。
楽しみだ。麻里亜の友達に会うのは。母親とは、入院時と退院時、たまにお見舞いに来た時に
数回会ったことはあるが、友達に会うのは、初めてだ。

彰は、スマホの電源を切って、麻里亜の仕事が終わる時間ごろに待合室に行くことにするのでそれまで
少しの睡眠をとることにした。

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~麻里亜Side~

彰から【いいよ。いつもの待合室で待ってるよ。看護師さんたちに話を通しておくからね。】という返信をもらい、私はさっそく
ななみたちにメッセージでOKを伝え、いつもの表参道のカフェで落ち合うことにした。

私は、正直、まだ不安ではあるが、ななみたちならきっと応援してくれると心から
信じてる。
部長からまた嫌みや仕事を押し付けられて、腹立ったが、彰に会える、たったそれだけで
私は、耐えることができた。

そして、夕方17時20分。やっと仕事が終わった。
心の中で部長め~!とイライラを募らせながら、ななみたちに今から待ち合わせ場所に行くと
メッセージを送って、会社を退勤したのだった。

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表参道のカフェ

ななみ、由香里、真奈美は、それぞれ勤務と家事を終えて、麻里亜を待ってた。

『ななみ。子供と旦那にOKもらった?』
由香里は、ななみに問いかけると、ななみは、明るい笑顔で
『大丈夫!旦那に全部任せてきた。”たまには、あんたもワンオペをやってみなさい!”って
言ったら、大人しく頷いてくれた。』

最近のななみは、旦那とすれ違うことが多くなった。離婚も時間の問題だなと
薄々覚悟はしてる。
離婚すれば、子供を預ける保育所や幼稚園を探して、職場を探さなければならない。
今まで夫の収入を頼りにしてた。
共働きが当たり前の時代、ななみは、夫の収入が結構高いので、夫から『家庭に入って、家と子供を守ってほしい』と
言われたから、大好きだった職場を退職してまで専業主婦になったのだ。

『最近さぁ、育児のことや私の家事のやり方に文句をつけるようになってきてさ。”家事や育児は女の仕事だろう”
って言ってきたんだよ。誰の子供産んだと思ってるんだと言ったら、”夫に向かってそんな態度は、生意気”って
言うから、今時、亭主関白は、古臭いって思っちゃって。』

正直、麻里亜が羨ましいと思ってた。
麻里亜は、優しい彼が恋人でいいなって思う。焦って結婚して、子供、しかも双子姉妹を出産したのが
間違いだったかな。あ、子供産んだことは、後悔してない。かわいいもん。

『ななみも大変だね。』
真奈美と由香里と話してると麻里亜が走ってやってきた。

『ごめん!待った?』
ずいぶんと焦った麻里亜は、走ってきたため、髪のセットもメイクも崩れてる。
『大丈夫だよ。ウチらもさっき来たところだからさ。』
由香里がメイクの上から使える汗拭きシートを麻里亜に1枚渡した。
『ありがとう。もうあの部長のせいで残業してて。』

麻里亜は、汗拭きシートで顔を拭きながら、タクシーを拾って、彰がいる病院へ向かった。
真奈美が助手席、由香里、ななみ、麻里亜は後部座席に座った。
『すみません。エリザベート病院までお願いします。』
『はい。わかりました。4名のお客様、ご乗車。目的地は、エリザベート病院』
麻里亜は、運転手に目的地を伝え、運転手は、それに従って、目的地まで行く。

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道中、優しい運転手さんの話がとても面白く、麻里亜たちは、退屈しないで済んだ。
代金は、2000円だった。
『じゃあ、ここは、私が払うよ』
麻里亜が代金払って、運転手にお礼をしっかり言った。

ななみたちは『悪いから、私たち3人から麻里亜にタクシー代の2千円返すね。』と言われ
3人からタクシー代2千円ずつもらった。

待合室に行くと、いつもの水色パジャマで待合室に彰がいた。
『あ、いたいた。彰ー!』
『麻里亜!待ってたよ。』

二人は、再会を喜び合った。
『紹介するね、左からななみ、由香里、真奈美だよ。ななみは、今、専業主婦で双子姉妹のママなの。
由香里は、デザイナー。真奈美は、小学校教師。』
3人は、それぞれ『はじめまして』とあいさつした。

『柚木彰です。いつも麻里亜と仲良くされてるんですね。嬉しいです。』
と彰は、笑顔を見せた。
『麻里亜、すごいカッコいいじゃない!どうやって捕まえたのよ!』
と由香里は、興奮気味に聞いてきた。

『もう告白した話とかするの、すっごい恥ずかしいんだから!』
『照れて~!』
真奈美は、笑いながら小突いた。

麻里亜は、彰が楽しそうに笑ってるの見て、心から『よかった。今日は、元気そうだ』と安堵した。
『麻里亜は、幸せだね。こんな素敵な友達がいるんだもん。僕は、友達と連絡すらあんまりとってないよ。』
ちょっと悲しそうな声で彰が言った。
『僕は、おばさんと兄貴が唯一、麻里亜以外の連絡相手なんだ。』
『柚木さん、お兄さんいるんですか?」
ななみが聞いた。
『うん。5個上の弁護士で今は、恋人できたって聞いた。とても素直でかわいい子だって言ってた。』
『私の会社の後輩の子とお付き合いされてるの。』
麻里亜が付け足しで説明した。

『そうなんだ!弁護士なんてすごいです。』
その時のななみの顔が曇ってた。何かあったのだろう?
今度、話を聞いてあげよう。いつも会社の愚痴とか付き合ってもらってるから。

これ以上、滞在すると彰や病院に迷惑なので15分ほどで買えることにした。
帰りに4人でファミレスに行って夕飯を食べることにした。

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『でも麻里亜っていいな。あんなに優しくってカッコいい男性が彼氏で』
真奈美は、今もうっとりしてる。
『そんなことないから~』
麻里亜たちは、それぞれ食べたいものを注文し、ドリンクバーを頼んだ。
ドリンクバーなんて学生以来だからワクワクする。

夕飯時のファミレスは、家族連れですごくにぎわってる。
ドリンクバーに行く時、偶然、ななみと二人になったので、何か悩みあるのか
聞いた。すると、ななみは『今、旦那とうまくいってないんだ。』と悲し気につぶやいた。
ドリンクバーから戻ってくるとき、ななみのスマホの着信が鳴った。
きっと、旦那からなんだろう。

『電話、出ておいで。料理来たら、置いててもらうからさ。』
由香里が気遣って、ななみは、『ありがとう』と言って、ファミレスの外へ出て行った。

『ななみ、専業主婦でしょ。今、離婚したら職場探しや預ける先の保育所とか探すのが
大変だから、迷ってるらしいよ』
真奈美が密かに教えてくれた。

『かわいそうだよね。今時、亭主関白って昭和の親父買か!って思う。ななみ、パートに出たいって
前、電話で話してて、旦那に『お前は、専業主婦なんだから働いてる暇あるなら家事と子育てに専念しろ』って
言われたって言ってた』

うわ~。ななみ、それ、モラハラなんじゃない?そんな時、彰の兄・智の顔が浮かんだ。
彼ならきっと離婚調停をうまくやってくれると確信した麻里亜は、電話から帰ってきたななみに
智の弁護士事務所を紹介したのだった。

運ばれた料理をそれぞれ堪能した4人は、帰り際、手を振り、また女子会しようと約束したが
ななみだけ『また出てこれるかわからない』と曖昧な返事をしたのだった。