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指定された廃墟は街外れにある、昔旅館だった建物だった。
2階建てで周辺に他の施設はない。

時々モノ好きな人たちが動画撮影などで訪れるくらいで、人の気配は少しもしなかった。

ここで大声を上げても、きっと誰にも届かないだろう。
廃墟へ足を踏み入れる瞬間絵里香はゴクリと唾を飲み込んだ。

5月だというのに廃墟の周りだけ肌寒く感じられる。
さすがに恐怖心が湧き上がってくる。

こういうホラースポットをテレビで見たこともあった。
「気味悪い」

早希が両手で自分の体を抱きしめてつぶやく。
こんな場所に友梨奈たちがいるなんて信じられなかった。

「もしかして怯えてる私を見てどこかで笑ってるのかも」