それに誰のかわからない目の病気を移動させられた時の恐怖は心に深く刻み込まれていた。
友梨奈に手を握りしめられただけで突然目の前が真っ白になった。

光だけを感じていたかと思うと、それもすぐに消えて暗闇が訪れたのだ。
呼吸ができない恐怖と、なにも見えない恐怖でパニックになった。

手を伸ばしてもなにもつかめず、助けを呼びたくても苦しくて声も出なかった。
もう1度あんな思いをするくらいなら、死んでしまった方がマシだった。

「私、行く」
スマホをスカートのポケットに入れて早希は席を立つ。

その表情には覚悟があった。
「そ、それなら私も一緒に行く」

絵里香が慌てて立ち上がる。
なにかあったときに少しでも助けになりたい。

それに、ここまできて友達を見捨てるわけにはいかなかった。
ふたりが動き出したのを確認して、詩乃と直斗も動き出したのだった。