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早希がいない学校は味のないドーナツみたいだ。

一見おいしそうでかぶりついてみるんだけど、味がしなくてすぐに吐き出してしまいたくなる。

こんなのドーナツじゃない! と、叫んでしまいそうになる。
「早希ちゃん大丈夫かな?」

早希が早退したあと何人ものクラスメートたちが心配して声をかけてくる。
「大丈夫だよきっと」

絵里香はいつもそう返事をした。
大丈夫だと思わないと、早希が可愛そうだから。

早希がいないからつまらないと思うのも申し訳ない気持ちになり、絵里香は他のグループに混ざっておしゃべりを始める。

でも、心の中ではずっと早希の顔がちらついているのだった。