☆☆☆

屋上を後にした早希は大きく息を吐き出してその場にへたり込んでしまった。
「大丈夫?」

絵里香は早希の背中をさする。
「大丈夫。さすがにちょっと怖かったけど、大丈夫だから」

それはまるで自分に言い聞かせているような言葉だった。
とても大丈夫そうには見えない。

「このままじゃダメだよ。こんな風にこき使われるなんておかしいでしょ」
「私は本当に大丈夫だから。だから絵里香は心配しなくていいから」

両手に飲み物を抱えたまま早希は言う。

その顔にはひきつった笑みが張り付いていて、どうにか絵里香を心配させないようにしようとしていることがわかった。

「これは私の問題だから、絵里香はもうついて来たりしなくていいからね」
どうにか立ち上がって階段を下りながら早希が言った。