敬語になってしまうのは友梨奈のことが恐ろしいからだろう。
早希の体は小刻みに震えている。

「それなら連絡してくればいいのに、ばっかじゃないの?」
友梨奈が笑うと詩乃と直斗も同じように声を上げて笑った。

思わずムッとして前へ出ようとしたけれど、早希に視線を向けられて絵里香は足を止めた。

ここで文句を言えば早希の立場が悪くなる一方だ。
絵里香はどうにか苛立つ気持ちを抑え込んだ。

「じゃあ、これをもらおうかな」
友梨奈はそう言うと炭酸ジュースを早希から一本受け取った。

早希がホッとしたように頬を緩める。
友梨奈はゆったりとジュースを一口飲んだ後、先に視線を戻した。

「なにボーッと突っ立ってんの? もう用事はないから、戻れば?」
その言い方にまたカチンとくる。

ここまでジュースを運んできたのにお礼のひとこともないのはおかしい。
だけど、なにも言えなかった。

早希は友梨奈に頭を下げて逃げるようにきびすを返す。
絵里香もその後を追いかけたのだった。