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友梨奈が好きな飲物がわからないと言って、早希は何本ものジュースを自動販売機で購入した。

炭酸ジュースに紅茶にコーヒー。
両手一杯の飲み物を抱えて屋上までの階段を上がる。

「前までは階段を上がるのだって息が切れてたんだよ。それがほら、これだけのジュースを持って一段飛ばしで登っても平気なんだから」

早希が明るい声色で言って微笑んだ。
けれどその頬は引きつっている。

必死で恐怖心を押し殺そうとしているのがわかった。
絵里香はなにも答えずにただ頷く。

そしてふたりで寄り添うようにして屋上へ続くドアを押し開けた。
外はとても良く晴れていて心地よい風が吹き抜けていく。