早希は体が固まってしまったかのように、その場に棒立ちになっていた。
「ご、ごめんなさい……」

じゃあどうすればよかったんだろう。
時代劇みたいに、チョコレートと一緒にお金を入れておけばよかったんだろうか。

だけど中学生の私たちに大金を用意することはできない。

絵里香はそう反論したかったけれど、友梨奈の威圧的な雰囲気に負けてなにも言うことができなかった。

ただ、ジリジリと早希に近づいていく友梨奈を見つめることしかできない。
友梨奈は右手を伸ばして早希の手を握りしめた。

早希は友梨奈に触れられた瞬間ビクリと全身を震わせる。
「私は他人の病気を取り除くことができる。でも……」

そこで言葉を切った。
早希の手を両手で包み込むように握りしめたその直後だった。

突然早希が苦しげに咳き込み始めたのだ。