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一旦は治まったかに見えた早希の咳だったけれど1時間目の授業が開始してからまた咳き込み始めた。

コンコンという咳の音は教室中に響き、みんなが心配そうに早希の様子を見ている。
早希の後ろの席に座る女子生徒が手を伸ばして背中をさすっている。

「高野大丈夫か? 保健室に行くか?」
国語の授業を進めていた担任の男性教師が手を止めて早希へ視線を向ける。

早希はそれに答えるのも辛いといった様子で咳き込み続けている。
これでは授業は身に入らないだろうし、なにより早希が苦しいばかりだ。

なかなか返事ができない早希の変わりに絵里香が右手を上げた。
「私、早希を保健室に連れて行きます」

保健委員は別にいたけれど、これほど咳き込んでいる早希をほっておけなくなってしまった。

先生も早希と絵里香が中がいいことを知っているので、安心したように頷いた。