「確かにそうだよ。だけど噂の子なんてどこにもいなかった。だから早く早希のお母さんに連絡しなきゃいけないの! わかったならそこをどいてよ!」

ついに怒鳴ってしまった。
絵里香は肩で呼吸を繰り返して女子生徒を睨みつける。

怒鳴られた女子生徒は表情ひとつ変えることなくドアの前に立っている。
時折早希へ視線を移して、小さく声を出して笑ったくらいだ。

「噂の女子生徒は私だよ。診てあげようか?」
小首をかしげてそう言う女子生徒に絵里香はまた言葉を失った。

唖然として目の前の1年生を見つめる。
この子が病気を治す女子生徒?

それにしては小柄で、ごく普通の子にしか見えない。
噂になっているくらいだから、もっと現実離れした容姿を想像していた。