咳が出始めるとなかなか止まらないようで、早希は何度もヒューヒューと乾いた呼吸を繰り返した。

このままじゃ早希が倒れてしまう。
「早希、とにかく校内へ戻ろう」

早希の体を支えてどうにか屋上の入り口へと向かう。
早希はその間も苦しげに絵里香の耳元で何度も咳き込んだ。

その度に絵里香は泣きそうになり、グッと苦しみを自分の中に押し込めた。
今一番苦しくてつらい思いをしているのは早希なんだ。

自分まで泣くわけにはいかない。
そう自分に言い聞かせて屋上を見回してみた。

そこには人影はなく、気配もない。