絵里香のとりこし苦労だったようで、思わず笑みがこぼれる。
ふたりして屋上へ出てみると、そこは広いコンクリートの地面だった。

時折明かり取りの窓があり、その周辺は柵で囲まれている。
「屋上、始めてきた」

早希が大きく息を吸い込んで言う。
教室やグラウンドにいるときよりもいくらか空気もきれいな気がする。

街を見下ろしてみると絵里香と早希の家の屋根がそれぞれ見えた。
その奥には大きな山もそびえ立っていて、とてもきれいな街に見える。

「離れて見ないと見えない景色ってあるんだよね」
絵里香が肩の高さまである柵に両手を乗せてつぶやく。

「本当。こうしてみると綺麗だねぇ」
感心したように早希が呟いたとき、急に咳き込み始めた。

苦しそうに何度も咳き込み、その場に膝をつく。
「早希、大丈夫!?」

慌てて背中をさするが、効果があるのかどうかわからない。