屋上へとドアはもう目の前だ。
早希はキョトンとした表情で絵里香を見つめた。

「なにも考えずにここまで来ちゃったけど、屋上の鍵って開いてるのかな?」

絵里香と早希が入学してから1度も屋上へ出たことはない。

時折、クラス写真を撮るために屋上へ出るクラスもあるらしいけれど、それ以外の目的で出入りできる場所だとは、聞いたことがなかった。

それに気がついた早希も一瞬険しい表情を浮かべた。
その顔つきのまま右手をドアノブに伸ばす。

今時珍しい丸いドアノブを回したとき、ギッと微かに音がした。
灰色のドアが重々しく外側へ向けて開かれていく。

爽やかな風と青い空を感じたとき、早希が安堵してため息をついた。
「よかった。鍵は空いてたんだ」