「ふふっ、楽しみ。だけど本当は外へ出て、この目で咲いているところを見てみたい。学校の花壇はどうなってる?」

6月に入って梅雨が始まってから、花壇の花々は元気に背を伸ばし始めた。
早紀にそう伝えると、懐かしそうに目を細める。

「いいなぁ。見てみたいなぁ」
「学校にはこられそう?」

早紀の顔に始めて沈んだ色が見えた。
うつむき、白いシーツを握りしめる。

「今の所わからない。なにせ友梨奈が持っていた間に随分悪くなってたみたいだから」

早紀は今でも呼吸器を外せないままでいる。
こうして会話していても、時折苦しそうに深呼吸する場面があった。

「そっか……」
「友梨奈たちは、どこに行ったの?」

そう聞かれて絵里香は左右に首をふった。