たった数秒間そうしていただけで、早希は次の瞬間には大きく咳き込んでいた。
苦しそうに呼吸をして、その場に倒れ込んでしまう。

「早希!!」
絵里香が駆け寄っても返事ができないくらいの状態だ。

このままじゃ呼吸困難で死んでしまうかもしれない。
絵里香は感覚のない両足を踏ん張ってどうにか立ち上がり、一気に駆け出した。

とにかく誰かを連れてこなきゃいけない。

保険の先生がいいかもしれないけれど、1階の保健室まで駆け下りる時間がもったいない。

絵里香は3階の一番近くの教室に飛び込んだ。
そこには運良く新人の猪崎先生が生徒と会話をしていた。

「猪崎先生!」
絵里香が泣きそうな顔で叫ぶように先生を呼ぶ。

猪崎先生は弾かれたように絵里香に駆け寄った。
「先生、早希が……早希が大変なんです!」