ここから逃げ出すタイミングはいくらでもあった。
だけど足の感覚がなくなってしまって動くことができなくなっていた。

元々逃げられなくするための魂胆だったんだろう。
「仲間を増やしてどうするつもり?」

「病気のない小さな街でも作ろうか。そこには幸せしかないんだ」
直斗も夢見るような目つきになっている。

「病気がないからって幸せとは限らないでしょ。生きていれば色々なことがあるんだから」

絵里香がなにを言ってもふたりは聞く耳を持たなかった。
きっとなにを言っても心に届くことはないだろう。

それから約1時間という長い時間、絵里香は何度も同じ言葉を言わされた。