下駄箱の蓋には先生の名前が書かれていて、その中ですぐに猪崎という名字を見つけることができた。

昼休憩中の今はみんな教室で給食を食べているから、廊下に出てきている生徒の数は少ない。

友梨奈はそのタミングで命令を送りつけているのだろう。
早希が右手を伸ばして猪崎の下駄箱を開けた。

中にはまだ真新しく見える茶色の革靴が入っている。
サイズはとても大きくて早希が手に持つとずっしりと重たく感じられた。

「先生は毎日これをはいて学校に来てるんだよね。きっと、1日の授業のこととか、生徒のこととか、考えながら」

早希がジッと革靴を見つめて言った。
絵里香も猪崎先生の顔を思い出していた。