「俺の場合はもっと最悪な状態だった。生まれつき心臓が弱くて、学校だって滅多に行くことができなかったんだ」

直斗が大げさな身振り手振りで過去の出来事を話始める。

「小学校に入学したものの、行けるのは年に数えるほど。久しぶりに登校しても親しい友人はできていないし、教室内ではずっと寂しい気持ちだった。早く病気を治して学校に通いたいと、ずっと願ってた」

病院の中から見える学校の景色は、きっと眩しかったに違いない。
自分が経験できないことを当然のように経験している子どもたちがいる。

それは直斗にとって深いキズとなっているかもしれない。

「それから中学へ上がったときに、病院の庭先で偶然友梨奈さまと会ったんだ。友梨奈さまは一目で他の人とは違うと感じた。なにか、惹きつけられるものを感じたんだ」

友人がほしかった直斗は1人で庭先にいた友梨奈に自分から話しかけた。
誰でもいいから、同年代の友人がほしくてたまらなかったから。