もしかしたら、詩乃と直斗のふたりが友梨奈のために掃除したのかもしれない。
階段を上がりきると赤い絨毯がひかれた廊下が現れた。

廊下は奥へと続いていて、右手はすべて外へ続く窓、左手が客間になっているようだった。
「昔は景色もよかったんだろうね」

絵里香が廊下の窓から外へ視線を向けてつぶやいた。

今は2階の窓を覆い尽くすくらい鬱蒼と木々が茂っているけれど、運営当初はここから森の中の湖畔が見えていて、ボートに乗ることができたらしい。

昔、絵里香の両親が若い頃ここに泊まったことがあると言っていた。
そんな思い出の場所をこんなかたちで歩くことになるとは思っていなかった。

「ここだ」
ギシギシとキシム廊下を歩いて最奥にある客室に到着した。

昔は○○の間とか書かれたプレートがあったのだろうけれど、今ではそれも取れて客間の名称はわからなくなっていた。