神谷中学校2年B組の教室は今日も騒がしかった。
5月の朝の太陽は心地よく窓から差し込み、合服姿の少年少女が眩しげに目を細めている。

この学校では女子がリボン、男子がネクタイをつけていて、学年別に赤色、緑色、青色に分かれている。

2年生のこのクラスの胸元はみんな緑色で彩られていた。
「この中学校に伝わる不思議な話を知ってる?」

永山絵里香にクリクリとした大きな目を向けてそう質問したのは高野早希だった。
ふたりは中学1年生の頃も同じクラスになり、その時からの友達だ。

「不思議な噂?」
絵里香はくせっ毛を揺らして首をかしげる。

どこの学校にも不思議な噂のひとつやふたつはある。

そういう話が好きな早希は今までも何度かこの中学校にまつわる噂話を絵里香に話して聞かせてきていた。

だけど、そのどれもがデマや事実に尾ひれのついた話ばかりで、現実味はなかった。
きっと今回もそんな話なんだろう。