居ても立っても居られなくてベッドから飛び出して部屋から出ようとドアノブを掴んだ。

とりあえず廊下に出よう、廊下に出ても何があるわけじゃないけどここから…!

「どうした!?」

ガチャッとドアを開けると、同時に前の部屋のドアが開いた。

201号室、青色のドアの住人…
えっとまだ名前聞いてなかった!


しょっぱなから人のお腹見て来たあの…!


「大丈夫かっ」


ーとんっ 


思いっきり飛び出したから勢い余って、そのまま胸に飛び込んじゃった…


「!?」


体温が、熱い。


「何かあったのか!?」

すぐさまガシッと私の肩を両手で掴んだ、そのおかげですぐに体は離れることになったけど…


真剣な顔で私を見てる。

たぶん本当に心配してくれてる。


「あ、あの…っ」

「なんだ!?」

「声が、声が…」

「声?」


だから私も少しだけ安心しちゃったの。


「隣から女の人の声が聞こえる~~~~~っ!」

うわーんと泣きたくなるくらい。

ううん、もう泣いてた。

頬が冷たかったもん。

「女の声って…っ」

「歩夢ちゃんどーしたん?斗空も…」

ガチャッと隣の部屋から出て来た。

「え、泣かしたん!?」

「俺じゃない!」

Tシャツ短パン、手にはスマホを持って…


『智成聞いてる!?私の話聞いてるの!?』


スピーカーホンから聞こえる、その声には聞き覚えしかなくて。

「それだっ!」

指を差して叫んじゃった。

『ちょっと誰?女の声が聞こえるんだけど!』

やばいっ、聞こえちゃった…!

あわてて口を押えた、今更押さえても意味なんかないけど。

「あー、りなちゃんごめんな。また後でかけ直すわ」

電話の向こうはまだ何か言いたそうだったけど、何も言わせないまま智成くんが電話を切っていた。

いいの?それ…

絶対あとで怒られるやつじゃない?

トンッとスマホをタップして私たちの方を見る。

目が合った瞬間、何か言おうとして口をひらっ

「いい加減にしろよ!」

…開いたのは、私の隣にいた方だった。
まだ名前わかんないこの、人。

「また女子にテキトーなこと言って夜な夜な電話してんだろ!しかもスピーカーホンで音量上げてんじゃねぇよ、隣に迷惑だろ!」

「ごめんごめんっ、隣に人入ったん忘れてたわ!でもテキトーなこと言うてないで、相談聞いててん!彼氏が最近冷たい言うて!」

「聞いてないだろ!スピーカーホンにしてスマホ放置してただろ!?」

「それが途中からオレのことが好きとか言うから話ちゃうやんってなって…」

なんか…
いろんなものが入り乱れてるような、じゃあ最後のあの言葉は…

「そしたら逆ギレされた!」

智成くんへの捨てセリフだったんだ…!

怖っ、女子!怖っ!!