「ドライヤーどこにしまったんだっけ!?」

段ボールの中をごそごそ、探してはいるんだけどちっとも見付からない。ぎゅうぎゅうに詰めて来たからどこに入れたのか自分でもわかってなくて…もう諦めようかな。

ちょっとくらい髪の毛濡れたまま寝ても平気だよね。

「………はぁ」

“別に仲良くしたいと思ってないから!!”

あんなこと言ったまま部屋に閉じこもっちゃった。バンッて大きな音を立てながらドアまで閉めて、誰も近寄らせないみたいに。

「…言い過ぎちゃったかな」

夜はなんとなく暗い気持ちになる。
だから嫌いだよね、夜って。

「ううん!向こうだって悪いよね!?デリカシーがないって言うか、困らせるようなことばっか言って来るんだもん!」

1人なのに無駄に大きな声にして、自分に言い聞かせる。うんっと頷いて段ボールの蓋を閉めた。

もういいやドライヤーは、しなくてもどうにでもなるよ。もう寝よう。

さっさと寝ちゃおう。

明日朝が来たらもう1度、女子寮が空いてないか聞いてみる。

どうにか無理くりにでも入れてもらえないか、話して…

うん、そうしよう。

電気を消してベッドに入った。

真っ暗は怖いからちっちゃな豆電球だけ点けて、無理矢やりに目を閉じた。

寝るんだ!って意気込んでふとんをかぶる。
 
そうやってすべてをシャットアウトしたつもりだったんだけど…

「……。」  


…。

……。


…『何してるの?』

……。


『わたしここにいるよ』

…。



『ねぇ、聞こえてる?』


…!


「…え?」


パチッと大きく目を開かずにはいられなかった。なんなら電気も消してる場合じゃない。


な、なに?

どこからか声が聞こえるような…? 


「なにっ!!?」


ガバッと体を起こして、キョロキョロと見渡した。 

だ、誰かいるの!?ここに誰か…!

「…いない、よね?」

電気も点けてみたけど誰もいなかった。

それはよかったけど…
いや、よかったの!?

よくないよねっ、だってかすかに声はまだ聞こえてる…

「…な、なに?どこから…」

ベッドはピタッと壁にくっ付いてる、方向的に隣の部屋とは壁1枚って感じの。 


だからこの隣は智成くんの部屋。

でも聞こえてくるのは、女の人の声。


ゾクッと背筋が凍る、えっと…


これは…

その…っ 


もしかして昔ここで何かあったとかある?


だって建物古いしボロいし、部屋だけキレイにリフォームしてあるのもなんか怪しいし!

バクバクと心臓の音が激しくなる。

ど、どうしよう…!?

1人暮らしなんて初めてだし、同室って聞いてたのに実際は女子もいない寮だし、夜は暗い気持ちになるから苦手なんだ…!

きゅっと小さくなるように体を丸めて、両手で耳を塞いだ。


これ以上何も聞こえてきませんように…!


『呪ってやる…っ』


「きゃぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」