「歩夢ちゃんそれ重いやろ?オレ持つで」

「え、いいよいいよ!これぐらい持てるし!」

「女の子なんやからこーゆうのは男に任せとき」

バケツに水を入れていたら智成くんが取りに来てくれた。たっぷたっぷの水の入ったバケツだったけど軽々ひょいって持って行った。

「はいっ、これ雑巾あゆむんの~!」

「ありがとうさっちゃん、今日の髪型もかわいいね」

「今日は大掃除仕様三つ編みだよ!」

ウイッグの三つ編みなんてさっちゃんはやっぱり器用だなぁ、今度やり方教えてもらおうかな。私なんてただ2つに結んだだけだもん。

「はい!じゃあ掃除始めるよ~、夏休み初日は掃除からだからね!」

パンッと手を叩いたでんちゃんの合図で臨時寮の夏の大掃除が始まる。

雑巾を濡らして、とりあえず私は…玄関のドア拭きからしようかな。

ガラス張りのドアを届くところから順番に、汚れの目立つところは何度もこすって、ぐーっと腕を最大限に伸ばして上の方も…

「!」

「絶対届かないだろ」

「斗空!」

ひょっと隣に現れて拭いてくれた。

「つーか手でどうにかなる高さじゃないだろ」

「一応気になるところは拭いた方がいいかなって」

「あとで窓拭き用のモップ借りに行った方がいいな」

これもたぶん学校に、基本寮には簡単なお掃除グッズしか置いてないからちと不便で。

「いちいち借りに行くのめんどいね、寮にも置いといてくれたらいいのに」

「一般寮は掃除業者が入るからな、ここは全部自分たちでするけど」

「え、そうなの!?」

「…なんだ、知らなかったのか?」

知らなかったけど、そんなの全然知らなかったけど!

ボロいだけじゃなく距離だってそうだし何かと不便さ出して来る、こう忘れた頃に。