「さぁさぁさぁ!白熱のトランプ大会もいよいよ終盤となって参りました!!」

パーティー用の大きな蝶ネクタイをした智成くんがキッチンから持って来たお玉をマイク代わりに司会さながらのパフォーマンスを見せる。席から立ち上がって身振り手振りしながら大きな声で。

「こちらには1位抜けした咲月壮太郎さんにお越しいただいております!壮太郎さん、この試合どう見てますか?」

「そうですね~、さきほどからジョーカーがとあ選手とあゆむ選手の間を行ったり来たり…そろそろ勝敗が決まるのではないかとそわそわしています!てゆーか決めてほしいです!あとその名前で呼ばないでって何度も言ってますコノヤロー!!」

「なるほど~、もういい加減見飽きたってことですね!ええ名前やんか!」

「そうとも言います!好きじゃないの!」

智成くんの前の席、私の隣でさっちゃんがコメンテーターを気取ってる。正面に座る斗空との一騎打ち、斗空が持つ2枚のカードからジョーカーじゃない方を引けば私の勝ち…

じーっと斗空の目を見ながらトランプに手をかける。

…こっち?
全然表情変えないから違うのかな?

じゃあ別の方…
でも全然表情変わらないけど!

永遠にこれなんだよね、ちーっとも変化がないの。

だから全然見抜けないんだけど…

「こっち!」

スッと勢いよくトランプを抜き取った。


いざッ、勝負…!!


「あ、ダイヤの5!揃った!!」

わぁ~~~~~い!私の勝ちだぁ~~~~~!!!

「あゆむんやったぁ~!」

「ありがとさっちゃん!」

つい興奮しちゃって立ち上がったままパンッと両手でハイタッチをした。

「今回も斗空の負け~~~!斗空もう数えるのやめるで!?トランプ大会何敗目かわからへんからな!」

「…7敗目」

「覚えてんのかい!」

丁寧に数えてるのも斗空らしい、それも笑っちゃった。


ずっと斗空とちゃんと話してなかったから、今すごく嬉しかったの。

悔しそうにする斗空にわざと勝ち誇った表情を見せれば眉間にしわを寄せて、そしたらまた笑って。


またこうして笑えるのが…


「ほな、明日の昼ご飯担当は斗空やな!」

とんっと智成くんが斗空の肩を叩いた。でもすぐにハッとした顔をして手を離した。

「あっ!ごめんちゃうかった、いつもの癖で!」

離した手で口を抑える、そんなしまった…みたいな顔しなくても。

「…歩夢ちゃんは今日が最後やったな」

「……。」


あ、どうしよう。


すごい楽しかったのに、急に現実に戻されたみたい。

すーっと消えていく、頬を上げていた筋肉が力をなくして。


みんな静かになっちゃった。


「……。」


何か、私が何か言った方がいいよね?


じゃないと、どんどん暗くなっていっちゃう。

でも今口を開いたら…っ