今日の音楽の授業は夏休み後の合唱コンクールに向けての男女分かれてのパート分け練習だった。

合唱という男女の特性を生かした声楽はいかにパートごと歌えるかにかかっていて、練習も個別でする必要がある。だから男女を分けるため2つの部屋を使って、さらに気まずさ増した女子だけの教室ができあがるわけで… 

みんなに臨時寮に住んでるのバレちゃってるし、誰が住んでるかもバレちゃってるし、たまにこそこそ噂されるのがつらい!

別に一緒の部屋じゃないからね!?
部屋はみんなバラバラなんだよ!?
やらしいって言ったの誰!?

うわぁぁぁ~~~
さっきまで智成くんがいてくれたの本当に助かった~~~!

早く授業終わらないかな、基本はそれぞれ個人で歌の練習だけど先生は1人しかいないんだ男子の方に行ってる時はこっちは無法地帯!

歌に集中しよ、めっちゃ一生懸命歌ってますって…!

「三森さん!」


………え?

今、呼ばれた…


常に繰り返し合唱曲がオーディオスピーカーから流れてる、だから少し聞き取りずらくて聞き間違いかと思った。

「…鞠乃ちゃん?」

呼んだよね?今、私のこと。

「さっきね、隣の隣のクラスで聞いて来たの!」

手を合わせて口角を上げる、曲が流れてるからいつもより大きい声だった。

「転校早まったらしいよ!」

転校…?
あぁ、1学期に転校していくって言ってた子?早まったって…

「夏休み前にはいなくなっちゃうみたいなの」

鞠乃ちゃんとその子はたぶん友達じゃないね、嬉しそうに教えてくれたから。

あ、違うかこれは…

「三森さんはいつ転寮するの?」

私が臨時寮から出て行くのが嬉しいんだ。私に出て行ってほしいんだ。

「早い方がいいよね、こーゆうのは!」

久しぶりに話しかけてくれた、まだ三森さんだったけど。


もし…

もし私が女子寮に入寮したらまた話しかけてくれるのかな?

また歩夢ちゃんって呼んでくれるの?


最初の頃みたいに、また遊びにも誘ってくれる…?

結局、可愛いって言ってたクレープはまだ食べれないまま。


「うん、すぐにでも…」

顔は上げられなかった、きっと笑えないと思ったからただ気持ちを殺して答えることしか。

「行くよ」

できなかったの。