「…っ」

痛かったけど、もうそんなこと構っていられなくて無理に体を起こして立ち上がった。

早くここから逃げたくて、早くここから離れたくて。


涙が流れて来るのがむかつく。


なんで流れて来るの…!


今度は一気に階段を駆け上がった。


もう嫌!ほんと嫌!


やっぱこんなとこ絶対嫌っ!!!


女の子はみんな自分に気があると思ってたり、男のくせに男子寮はむさ苦しいから住みたくないってわがまま言ったり、一番最悪なのは勝手に人の裸見て…っ 



ありえない!

困ったやつらしかいないじゃん!


なんなのこの寮…!! 


お父さんとお母さんだってだよ…

本当は漫画の最終回なんていいよどうにでもなるもん、そうじゃないよ…

急に海外行くって言われてもついてけないよ!

行けないよ、私にだって私の生活があるんだからそんなこと言わないでよ…っ



困らせないでよ…!



階段を上り終えた。

ぜぇはぁと肩で息をしながら、こぼれる涙を手で拭って。

「あ、歩夢ちゃん!」

部屋に向かおうとした時、ちょうど緑のドアが開いた。

「壮太郎と話してたんだけど歩夢ちゃんの歓迎会しよかなって、今日の夜食堂で」

「やめて」

はぁはぁと震えが止まらない。

「そうゆうのいらないから!」

言いたいことも止まらない。

口を開いた瞬間から次から次へと溢れて来るみたいに、自分を止められない。

「臨時だから!私がここにいるの、少しの間だから!」


こんなとこ来るんじゃなかった。

やめておけばよかった。

でもどうしたらいいかわからなかったんだもん。


「別に仲良くしたいと思ってないから!!」


もう帰る場所はここしかないのに。