「え!?あゆむん女子寮行っちゃうの!?」

「あーなんか転校する子ぉおったよなぁ、それで女子寮空いたんやな」

えーーーーーーーーー…
そんなこと突然言われても困るんだけど!

足のしびれと驚きでコンクリートの地べたにぺたんっと座ったまままだ立てないし急に転寮って言われたことにも追い付かない。

私、ここから出て行かなきゃいけないの…?

「あゆむん大丈夫?立てる?」

「う、うん!大丈夫、ありがとう!」

さっちゃんの手を借りてやっと立ち上がれた。

とりあえずまずは片付けしないとだ!花火のゴミはちゃんとしてって言われたし!

「これってこのまま水に浸しとけばええんかな?」

使い終わった花火は水の張ったバケツに捨てていた、さっき一晩しっかり水に漬けてって言ってたから…

「いいんじゃないか、ここに置いておくのはまずいから伝蔵さんに言って寮の玄関にでも置かしてもらうか」

花火の入っていた袋を丸めた斗空はもう着々と片付けを進めていた。

「見当たるゴミは片して、また明日明るい時に掃除するようにしよう」

「だよね~、暗くて見えないもんね~」

「せやな、じゃあそれもでんちゃんに言うとこか!」

私がぺたんと動けないでいる間にだいぶ掃除が進んだらしい、ほとんどすることがなくてただパタパタと服をはたくだけになっちゃった。

明日ね、明日の掃除はちゃんとしよう!

それで…
女子寮へ転寮すること考えなくちゃ、いけないんだよね。

「オレでんちゃんに鍵もらいに行って来るわ」

「ボクも行くよ~!」

智成くんがバケツを持ってさっちゃんもついていくように階段を下りて行った。

「斗空、ゴミ捨て行くよね?私も何かすることある?」

大きいゴミは斗空が持ってるやつくらいだし、あと私ができることは…

「出て行くのか?」

「え…」

私の前に斗空が立った。

「…まだわからない、けど」

顔を見上げたけど暗くて表情がよく見えなくて、思わず下を向くように目を逸らしちゃった。

だから微かにしか聞こえなかった。

じわっと汗がにじむ夜の屋上で、淡く私の耳に入って来る。


「行くなよ」


「……。」

え…、今…っ!?

「斗っ」

「これ捨てるだけだから歩夢はいいよ、もう部屋戻ってろ」

もう一度顔を上げた時にはそこに斗空はいなくて、遮られた言葉だけは残った。

先に階段を下りていく後姿を見つめて、聞きたかったのに聞けなかった。