玄関にあった自販機まで飲みものを買いに行こうと階段を駆け下りた。

わざわざ駆け下りる必要なんてなかったんだけど、気分的に。気分を上げたくてダダダダッと一気に。

階段を降りたら左に曲がる、そしたらもう自販機はすぐそこー… 


「きゃっ」


前は向いていたつもりだった、だけどとにかく必死で走って来たから止まれなくて。

「痛…っ」

たぶん人?にぶつかって、その反動で床に横たわった。

体がジンジンする、思いっきり床にぶつけちゃった。


「誰だ、お前…?」


私の前に立つ男の子、整った顔立ちには目を引いて。



わ、カッコいい…

つい見入ってしまうくらいに。


これが3人目の男の子…?



「お前、不審者か…!」

「え!?」

キリッと目つきが変わった。

それに焦って体を起こして立ち上がろうとしたけど、ズキッと体に響いてすぐには起き上がれなくて。

モタモタしているうちに男の子がすぐさましゃがみ込んで私を捕らえようとした。

「ちょっと…待って!待って!」

グイッと引っ張られる。

無理やり上半身を起こされ、離してほしくて男の子を腕を掴んだ。

さっちゃんの力とは全然比べ物にならない力…っ、これじゃ全然離してもらえそうにない!

「ふっ不審者じゃないです、違います!今日からここに住むものです!」

「……。」

「この寮にお世話になるものですっ!!」

「今日から寮に…?」

私の腕を持ったまま首をかしげる。

逃げられないようにってことなのかな、でも足が痛くてへたんと座ってるだけで精いっぱいだよ。

「だから私…っ」


―ペラッ 


お腹にスーッと風が当たった。



え…?なんか急に寒い…



ふっとお腹を見るように頭を下げる。


「ぃやぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」


ドンッ、と体を突き飛ばした。
私の声にびっくりしてか掴まれていた手も離れて、飛ばされた相手は尻もちを付いていた。

「な、何すんの!?信じられない!」

着ていたTシャツをペラッと、ペラッって…

ど、どこまで見えた!?どこまで見たの!?


いやぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!


「もしかして…女?」

「どっからどう見てもそうでしょ!」

「いや、来る奴男だって聞いてたし」

「女子だよ!しっかり女子!!」

もう最悪!

最初からずっと最悪!!

なんなの、何でこんなとこ住まなきゃいけないの!?

「咲月みたいな奴が入って来たのかと思って確認しようかと」

「一緒にしないで!!!」

キーンと私の声が寮中に響いた。

我慢できなくて大声で叫んじゃったから。



やばい、泣きそう…!