「おー、来た来た!」

「あゆむんとあぴ早く早くー!」

階段を上がって智成くんが開けてくれたドアを通るとどーんっと何もないだだっ広い屋上が現れた。

これが屋上ってやつ…!
初めてだ、舞い降りたのは初めてだ…!!

「あゆむん花火どれがいー?」

「えっとねぇ、怖くないやつがいい!」

「…全部火は点くけどいい?」

さっちゃんから花火を1本もらってどこからか智成くんが持って来たロウソクで火を点ける。シャァーと音を立てて緑からへ青、青から赤へと火花が色を変える。

「キレイだね」

久しぶりだなぁ、花火なんて。

「ねぇねぇ線香花火もあるよ~!あとでみんなで勝負しよーよ、罰ゲームありで!」

「ええな、絶対負けへんわ」

「とあぴはやる罰ゲーム考えといた方がいいよ」

「なんで俺が負ける前提なんだよ!」

「でもたぶん負けやで」


どんどん暗くなっていく空、だけど全然寂しくない。


ずっと笑っていたから。

楽しくて、ずっとこの時間が続けばいいのに。


そう思いながら火花を見つめていた。


「ほないくで最後や!」

じゃん!と智成くんが打ち上げ花火を屋上の真ん中に置いた。私たちはドアの前で並んで立ってた。

「って離れすぎやろ!!」

「安全第一だよ智成~!」

「任しとき!」

スッとライターを取り出して火を点けた。

自分たちだけで打ち上げるとか、初めてのこと過ぎて心臓がバクバクして来た…!

智成くんが速やかに走って来る、どんなやつなんだろ…

ゴクリと息を飲む。


どーーーんっ 


わ…、思ってたよりも…

「小さいな」

「斗空くん市販のなんてそんなもんや!!」

こじんまりしてた。
可愛らしい花火がちょこんって感じ。

だけど…

「キレイだったね!」

今まで見た花火で1番キレイな花火に思えたんだ。

「ねー、キレイだった~!」

「まぁ悪くないな」

「ええやろ、世界一や!」

みんなで見上げた空はどこの空よりも輝いて見えた。


そんな夏の思い出…


「こらぁー!君たち何してるんだ!!」

「あかんバレた!」

「「「え?」」」

階段の下から叫ぶ声がした、しかもめっちゃ怒ってるこの声は…

「でんちゃんや!」

のっしのっしと階段を上がってくる音が迫ってくる、そーいえばこそっと鍵借りて来たって言ってたけどそれって許可取ってないってこと!?

「みんな逃げるで!」

逃げるとこなんて屋上なんだからないんだけど、智成くんがそう言ってから一斉に走り出した。でんちゃんがぜぇはぁ言いながら階段を上がって来る。

「こっ、こんなとこで…はなっひは…っ」

息切れで何言ってるか全然わかんない!

だから意味もなく走っちゃって、みんなで顔を合わせて笑った。


星の瞬く空の下、声を出して笑い合って。


私ここへ来てよかった。

ここが好きだよ。



私を困らせる男の子たちは、隣にいれば最強かもしれない。