「あゆむんテストどうだった~?」

「…できたよ、自分の能力分は」

「赤点じゃないといいねぇ」

「あ、できてないと思われた!」

臨時寮の2階、向き合った私と斗空のドアの間には窓があってそこにさっちゃんと並んで外を眺めていた。

テストも無事終わってすっかり夏に入った。

窓を開けたぐらいじゃ暑いけど木々に囲われたここはまだマシで、もうすぐ日が暮れるし。

「テスト終わったら夏休みだね」

「そうだ、ここに来て初めての夏休みだ!」

「楽しみじゃーんっ」

窓の淵に頬杖を着きながらにひっと笑って、ふわっとハーフアップにまとめた髪が風に揺れた。

「さっちゃんって器用だよね」

「そう?」

「うん、お団子かわいい」

ボーダーのTシャツにジャンスカを重ねた姿にハーフアップにまとめた髪をくるんとしたお団子はすっごく似合ってる。

「…本当は男の子だけどね」

遠くを見るように視線を窓の外へ向けるさっちゃんの横顔を見て、まつ毛が長いなって思ったり。

つまりは私にはそんなことどっちでもいいんだ。

「でもさっちゃんはさっちゃんだから」

それもさっちゃんだよ。

「…うん」

顔だけ向けて微笑んだ、それに私も笑って返した。

いいなぁ、こーゆうゆったーりしたほわほわした空間。まったりしちゃう、こうして友達といられる時間…

「!」

こてんっと右肩に重さを感じた。

「さっちゃん!?な、何!?」

暑い夏の気温、さらに右側だけ熱くなる。てゆーか焦って顔まで赤くなる。

「え?何が?」

なのにさっちゃんはしれーっとした顔をしていた。上目遣いで私のことを見ながら。

「いや、これはダメでしょ!?何してるの!?」

「えー、だってさっちゃんはさっちゃんだからって言ったじゃん??」

「それ今関係ないから!だってさっちゃん男の子だもん!!」

あ、やば!
今のはよくなかった…!?

しかも思いっきり突き飛ばしちゃった、両手でどんって。

「……ふっ」

「え?」

一瞬びっくりした表情を見せたさっちゃんが今度は笑った。

声を出して体を震わせて…


これは笑われてる??


「ねぇあゆむんって斗空のこと好きなの?」

「えぇ!?」

笑い過ぎて流れて来た涙を拭きながらされた突然の質問に声が裏返っちゃった。

「全然!全然好きじゃないよ!?」

そんでもってそんなこと答えられるわけない!

「ふーん…」

ずいっと近付いた、下から覗き込むようにじぃっと見つめて。

「じゃあまだチャンスある?」

「チャンス!?」

な、なにを言ってるの!?
何のチャンス!?

うろたえる私にさっちゃんは笑って、そんな私を楽しんでるみたいに笑って…

楽しいのはいいけどもうこれ以上困らせないでほしい。