考えてみる。
斗空の言葉を何度も思い返しながら、私もさっちゃんもお互いのこと考えすぎってどうゆう意味かなって。


でも何度考えても辿り着く先は1つしかないよ。


「さっちゃん、一緒に帰ろう!」

「あゆむん…」

「帰ろう、私と!」

「…いいけど」

キラキラ眩しいさっちゃんの隣を歩くのは私まで注目されて、ばいばいって手を振られれることもある。

みんなに笑顔を振りまくさっちゃんを、遠くへ行っちゃったみたいで寂しいとかそんなこと思ってるわけじゃない。


それでもさっちゃんがいいならいいんだ。

さっちゃんらしくいられるなら。


「さっちゃん、私ね」


でも本当のさっちゃんの気持ちが、私は聞きたいんだよ。


「さっちゃんのこと好きだよ」

「え…?」

学校から寮への帰り道、今日は天気がいい。少しあるこの距離もサクサクと歩いて行けそうで。

「さっちゃんが何をしても何を好きでもどんな格好してても、私はさっちゃんが好き」


あの日、一番最初に言ってくれたのはさっちゃんだった。

“あゆむんね!咲月って言うの、さっちゃんって呼んでね!仲良くしよ!”


それだけで心強かったんだよ。

友達になれたら嬉しいなって思ったんだよ。


「だからさっちゃんの好きな格好していいよ」


“最初からこうすればよかったんだって思った”

それは私と、一緒にいることを選んでくれたんだと思った。 


“最初からこうすればよかったんだよね”

でも実際は自分といることで私がつらい目に遭わないようにしてくれてたんだよね。


「していいんだよ、さっちゃん…!」

気付いたら足は止まっていて、森の中叫んでるみたいになってた。それぐらい必死に叫んでた。

「自分で自分を否定しないで!さっちゃんはそのままでいいんだよ…!」

誰が何を好きだって関係ないんだ、それよりも自分を好きでいてほしい。


「私はどんなさっちゃんでも好きだから!」


今度こそ伝わって、私の気持ち。


「あゆむん…」


私ね、さっちゃんと一緒に笑いたいだけだよ。


「あゆむんはすごいね」

さっちゃんが目を伏せた、でも次に顔を上げた時は微笑んでた。

「そんなこと言われたの初めてだよ」 

穏やかな表情で、少しだけ首を傾けて。


「ボクも、あゆむんのことが好きだよ」


“歩夢も咲月も考えすぎなんだよ”

私だけじゃない。
私のことも、思っててくれたんだ。


「もうやめるよ、ボク本当はスカートが履きたいんだ」

「うん!それがいいと思う!」


さっちゃんが好きだから優しくしたい、それが答えなの。


「さっちゃんのことはさっちゃんが決めていいんだよ!」

笑ってくれたから、どんな格好をしていてもそうやって笑ってくれたら…


だから一緒に笑っていようよ。