それからの日々、さっちゃんを取り巻く環境はガラリと変わった。


「壮太郎くんカッコイイよね〜♡」

「めちゃくちゃ美少年!」

「ちょっとやばいよねー!ときめいちゃう!!」


「……。」


さっちゃんと一緒に食べる約束をしたのに気付けばさっちゃんの周りだけじゃなく私の周りにもギャラリーが増えた。女の子ばっかだったけど。

何コレ私の憧れだったやつじゃん!

ううん、そーじゃなくて!!

「あゆむんはゼリー派だったよね?ボクはプリン派だから今ちょっとプリン派のが多いね」

なぜかゼリープリン論争が始まっていた今日のお昼ご飯。

「あやみんもプリン派?ボクと一緒だ」

知らん名前も出て来た。
あ、前に座ってる子ね?


…本当に一瞬で変わるんだ、私たちの生活は。


すっかりさっちゃんは人気者で、一緒にいる私はついでに話しかけてもらえる存在になってた。

そりゃみんなで食べた方がおいしいとは思うけど…


隣で笑うさっちゃんはどこか違う気がして、迷っちゃうんだ。


「今日も喋り過ぎちゃったな」

「そうだね、さっちゃんずっと喋ってたよね」

「だから全然ご飯進まなかったよ、次は気を付ける喋ることに夢中にならないようにしよう」

食堂から出て渡り廊下を通ったら階段を上がる、教室はこの上の階にある。

さっちゃんは変わらず明るい声で話していた。

だけど心なしか最近は話し方も違う気がする。

「…さっちゃん」

「何?」

振り返る姿も表情も私の知ってるさっちゃんからどんどん離れていくみたい。

「さっちゃん今日ほんとに楽しかった?」

「楽しかったよ」

「…本当に?」

階段を上がろうとするさっちゃんを引き止めた。

「うん…あゆむんどうしたの?」

男の子のさっちゃんには慣れない。

「それでいいの?」

「…何がダメなの?」

でもその笑い方にはもっと慣れないんだ。

「さっちゃんらしくないよ!だってさっちゃん言ってたじゃん、女の子の格好がしたいんだよね!?」

どうしても無理に笑ってるみたいで、表情を作り変えてるみたいに見えた。男の子でいなきゃって言い聞かせてるみたいに。

「あゆむん…、なんでそんなこと言うの!?ボクは自分の意志で好きな格好してるのに…っ!」

「待ってさっちゃん!」

もっと話がしたかった。

でも頭ごなしに言っちゃったから伝わらなかった。

「違うのっ、待ってよ!!」

走って行っちゃった。上がろうとしていた階段も上らないで、走って行っちゃった。