「斗空くん好きやろあれは」

「ぎゃぁっ」

斗空の開けたドアが閉まった頃、後ろから現れた智成くんがひょこっと私の肩に顎を乗せた。びっくりして思ってたより大きな声出ちゃったじゃん。

「無自覚ほど怖いものないねんなー」

私の声になんにも動じず何もなかったように肩から離れてかがんだ体制をスッと元に戻した。

「歩夢ちゃんおはよう」

「…おはよう」

ニカッと大きく口を広げて、顔を見ただけで元気そうだってわかった。

「…無自覚ってなに?」

「あれはそうやろどう見ても、斗空くん意外と鈍感やねんな」

無自覚ってのは自覚がないけどってことだよね?それは自覚がないけど私のこと…

「なんでわかるの?」

「なんでって…」

自分ではうぬぼれてるみたいで言えなかった。だから聞きたかったんだけど、言いかけた智成くんがすぅっと顔を近付けたから。

「やっぱわからへんわ」

私と身長を合わせるために背中を丸め、私の顔の隣にすぅーっと腕を伸ばした。

「歩夢ちゃんはオレのことどう思ってんの?」

ドンッと自販機を壁代わりにして。

なんか前にもあった光景!デジャブ!!

「オレは歩夢ちゃんのこと…」

私の顎を掴んでクイッと上げる。

さらに智成くんとの距離は近付いて…

「えぇっ、何!?困る!」

どんっと両手で跳ね返すように智成くんの体を押した。

「智成くん慣れ過ぎ!私もう学校行くから!!」

引きはがすだけ引きはがして走って寮から出た。
さっちゃんのこと待ってるつもりだったのに、思わず飛び出したからそのまま学校へ行っちゃった。