何もできなかったな。

何も言えなかった…


やっぱりも1回追いかけた方がよかったかな、でも何を言えば?


…あんなこと言われて追いかけるなんてできないよ。


「…全然勉強する気起きなぁーい」

はぁっと勉強机に顔を伏せた。思ったより勢い余ってごつんっておでこが机に当たる音がした、ちょっと痛い。

テストも近いし勉強しようかなって部屋にこもってみたけど、ちっともはかどらない。さっきから開いたままの英語の教科書は1ページもめくられてないんだもん。

「…ちょっと休憩しよっかな」

食堂の冷蔵庫に冷やしてある飲み物を取りに行こうと立ち上がる。一応勉強してる気分を持続できるように英語の教科書を持って、雰囲気だけは保たれるよう部屋から出て階段を下りた。

「あ」

食堂の前、玄関の方から歩いて来る斗空と目が合った。手にはお茶のペットボトルを持って、たぶんそこに自販機行ってたな。

「何してんの?」

「え!?何って喉乾いたから冷蔵庫に飲み物取りに来ただけだよ」

「教科書持って?」

「これはムード!」

「なんだよそれ」

誰に見せるわけでもないけど、歩き教科書しながらここまで来ちゃったから…閉じるタイミング失ったっていうか少しでも勉強を忘れないっていう意気込みだったんだけどこの一瞬でどーでもよくなった。

「え、斗空お風呂上がり!?」

ついさっきまで入ってましたと言わんばかりのホカホカした湯気を(まと)いながら濡れた髪をタオルで押さえていた。

「え、お風呂上がり!?」

大切なことだから2回言っちゃった!

「あぁ、出たばっかで暑いからお茶買いに」

いや、待って待って!

これも寮なら普通にあるあれだよね!?

でも急だったから、不意打ちだったから…


ドキドキして来たんだけど!!?


わぁーーーーーーーーーー…